第五回


 扉が開き、薄暗い室内の中に光が入り込んでくる。
 それと同時に山野は素早く扉から距離を取り、扉を睨んだままスタンロッドを構えた。
 僕も怪我をした片腕に布を具現化させる。上腕から千切られたのが左腕で助かった。残ったのが利き手ならばまだ戦闘することができる。
 開いたドアの先には、いたのは若い男だった。
「いやぁ、ええ戦いやわぁ。格闘芸武(カクトウゲーム)はこうでなきゃあかんね。おいでみせませ、ごらんあれってね」
 それがその男の第一声であり、あまりにもこの場に相応しくない陽気な声に山野が怪訝な表情を浮かべた。
「ずっと、見とったけどね、中々できるもんやないわなぁ。腕を切り取られて表情一つ変えへんのはたいしたもんや。君のレベルやったら、せいぜいDクラスってところやのに」
 男は右手に煙草を手にしたまま、長い金色の髪をかきあげる。
 鋭利さよりも甘さの目立つ顔つきや、その切れ長の蒼い目や色の白さ、コートの下のしなやかな体つきから海外の人間ということはすぐに分かった。
 肌がヒリヒリとちりつく。背筋をゆっくりと何かがのぼるような感覚がした。
 目の前で暢気に構える男に対し、無意識に身体が警戒しているようだ。
「高瀬君、この偽関西弁が尾行してた人……?」
「ああ」
 僕達がコソコソと言葉を交わすのを見て、男は口の端を尖らせる。
「あー、人が場を和ませようとしてんのに、そういう態度取るんやねぇ、君らは。まるで笑顔を忘れた十代みたいやん」
 男が一人でブツブツ喋る中、僕と山野は言葉を発することなく警戒を続ける。
 僕たちの緊張感も関係ないように男は欠伸をしながら、こちらを見つめていた。
 ふと、僕はあることに気づき、小声で山野に尋ねる。
「山野、この男はさっき――」
「ええ、『見てた』、はっきりそう言ったわ」
 見ていたと――この男はさっき、確かにそう口にしていた。
 一体、どこで見ていたと言うのだろう。覗けるような状況ではないし、少女とあのてむじんが気づかなかったというのだろうか。
「遠隔視かしら?」
「何かの能力や術を使うのかもしれない」
 男はコソコソと話す僕たちを眺め、口の端を吊り上げる。
「楽しいお喋りなら混ぜてくれへんかな。どうも若い子に無視されると寂しいねん」
「この偽関西弁……」
 山野が強く歯を握る。緊張感と重圧からか、その手は小刻みに震えていた。
 この男は重圧のかけ方が上手い。見てたと口にしたのも僕たちを動揺させる為だろう。
「君、高瀬卓士君やろ?んで、そっちが山野夕陽さん」
 山野は驚いているようだが、そこまで驚くこともない。住所がばれようがなんだろうが、敵として現れたのならば殺せばいい。
「つまり、調べ済みというわけですね」
 僕の言葉に男は頷く。そして、コートのポケットから、右手でナイフを取り出す。
「君ら、平和的解決って好きかな?」
 男はふいにそんなことを口にした。
「ええ」
 ととりあえず僕は肯定する。すると男は口元を押さえながら笑う。
「ほな、死んでくれ」
 平和的解決で死んでくれと言われたのは初めてだった。
「依頼でね、君らを殺さなあかんのよ。だから争いになる前に自害でもしてくれんかな?」
「な!?」
 思わず声をあげた山野は、へらへらとしている男を睨みつける。
「ふざけたこと抜かしてるんじゃないわよ」
「いやいや、本気の本気よ。君らを殺さないとあかんのよ。まぁ、依頼や、悪く思わんでな」
 いともたやすく、スナック感覚で男は僕たちの命を奪うことを宣言する。
 言葉どおりに、まるで、簡単に実行できると言わんばかり余裕の表情だった。それは能力に裏づけされた自身と経験によるものだろう。
 僕はとりあえず、山野に逃げろと言おうとした。
「次に高瀬君、君は、『山野、逃げて』と言う」
「山野、逃げ……」
 そこまで言って――僕は口元を押さえる。
 嫌な汗が額から流れ落ちた。背筋に氷を入れられてるような感覚がした。
 僕は男の言う通りのことを口にしていた自分に、驚きを隠すことができない。
「う〜ん。高瀬君、君は山野さんと違って驚いた顔せぇへんのな」
 男はさもおかしそうに笑いながら、僕たちに左手の平を見せる。
 その瞬間、山野のかすれた悲鳴が室内に響いた。
 山野は気づいていないだろうが、腰がかなり引いて重心が後ろにかかっている。多分、男の初動に対処することはできないだろう。
「な?言うた通りやろ?うち等、緒川兄弟に見えへん物はない」
 男の言葉に続き、
「そうそう、うち等、二人式は絶対に負けへんよ」
 女性の声が薄暗い室内に響く。
「何なの、高瀬君、あの人は――手に」
「ああ」
 静かな廃墟に動揺した山野の呼吸音が響く。
 それは小さな笑い声を漏らしながら僕と山野を交互に見る。同じように男も口元をつりあげクククと笑う。
「紹介するわ。ぼっくの妹さんです」
「どうも、妹です
 男のおどけた声に山野は歯を噛み締めるが、動揺しているせいかカチカチと奥歯を何度も鳴らしていた。
「山野、落ち着いて下がってくれないかな」
「落ち着いてるわよ……!!」
「落ち着いてないから言ってるんだよ」
 動揺している山野を見て、それが――左手に生えている人間の顔が口の端を吊り上げる。
 しかも、その目鼻、顔立ちは女性の物だった。
「何なの、この人たちは……Dなの?」
「ああ、この人たちは――」
 僕が言いかけた時、それより早く左手が喋った。
「次に高瀬さんはウチのことを、『この人たちは手の目と呼ばれるDで』言う」
「この人たちは手の目と呼ばれるDで……」
 そこまで言いかけてまた僕は口を止める。それは男の左手の言う通りだった。どうやら完全に読心されているようだ。
「手の目……」
 山野が何回も大きく息を吐きながら呟く。
「手の目……あの、民話とかに出てくる妖怪?」
 僕は目の前の敵を見つめながら、山野の言葉に頷く。
 手の目とは、民話では両手に目玉が付いている座頭姿の妖怪であり、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』にも記載されている。
 日本古来種のダムドであり、冬達外来種に比べ数は少ないと聞いたことがる。読心、先読み、霊視に長けたダムドであり、レベルによっては遠隔透視できる者もいるらしい。
「さてさて」
 男が僕たちを見つめながら、ゆっくりと一歩踏み出した。
「そろそろええかな?十分にびびったかな?」
 ヒュウっと、男の振るうナイフが空を切裂く。
「山野、少し下がってて」
「高瀬君、私も……」
「無理しなくていいよ」
 そう言いながら、僕はゆっくりと両足を肩幅に開き、両腕を垂らし、無極式の構えを取る。
「へぇ。体内での練気……無極式集勁か、さては太極拳かな?それとも八極やろか?」
 答える必要はなかった。その代わりに体内の気――勁を集中させた。
 僕は、ゆっくりと息を吐くと、勁に同時に意識も集中させる。
 凪いだ水面のように、風に舞う木の葉のように、精神と身体をつなげていく。
「兄さん、高瀬さん、布以外もいけるみたいやで。布の不意打ちに気をつければええわけちゃうで」
「わかっとるよ」
 上半身を開き、後ろ足に重心を落とす。そして右手を胸前に構える。
「でもな、高瀬君、どんな攻撃も無駄やねん」
 踏み出す右足が室内を震動させる。
 それと同時に僕の体は男の前に飛び出していた。
「ほほいっと」
 男が突き出すナイフを、布包帯を巻いた左手の回転で逸らす。
「ほう、八極の纏やね」
 呟くと、男は素早く背後に下がりながら距離を取る。
 纏とは八極拳の腕を使った防御技であり、肘や肩の回転で小さな円を描くように腕を回し、敵の格闘攻撃を弾き逸らす。
「なら、連続はどうやろね」
 男の身体が床を蹴った。バッタが跳躍するように一瞬では宙を飛び跳ねていた。
 ナイフを握る右手が、残像が残るほど素早く動く。
 高速移動しながらの斬撃が光のラインを刻む。
 だが、それは僕に攻撃が届かないレンジ――のはずだった。
 その瞬間、連続する風を切裂く音と共に、切っ先が僕の身体を切裂く。
 衝撃が僕の右上腕筋を、左内腹斜筋から腹直筋を切裂き鮮血を噴出させていた。
 熱い痛みを感じながら、僕は後退して間合いをとる。
 攻撃が届いたことにも驚いたが、あの一瞬でそこまで攻撃されるとは思わなかった。
「あのロボットと同じや」
 届かないはずのレンジへの攻撃、その仕掛けは実に簡単だった。
「ロケットパンチってところやね。むしろ、ズームか」
 ゴキリという音共に、男は自分の脱臼してだらり垂れ下がった右肩をはめ直す。
「君は兄さんに勝てへん。ウチには見えとんねん、高瀬さんの動きを」
 僕が――もう一度、前に出ようとした。
 刹那、ふいに、左足が痛んだ。
 それに気づいた時、僕の身体がバランスを崩す。何が起こったのか全く分からない。
「見えへんかったやろ?人間ってな、動きと動きをつなげる間、瞬きするよりも短い時間だけ意識途切れんねん」
 男は僕のすぐ目の前にまで接近していて、それは千載一遇の好奇だった。それなのに、無様にも僕の体は床の上を転がっていた。
「俺と妹は一心同体。妹が見た全ては俺に流れ、俺はそれに従い行動する、それがうち等が二人式呼ばれてる理由や」
「そ、筋肉の動きすらウチには見えんねん。先見と、動きと動きの隙間を捉えその隙間に攻撃を加える――これがうちらの力や」
 ゆっくりと僕の喉にナイフが差し込まれる。喉の――中斜角筋の辺りにナイフが差し込まれてるのが自分でも分かった。刹那、口の中から血液が溢れ出し呼吸もできなくなる。男がさらにナイフを押し込むと同時に、ボキリと野菜をまとめて砕くと音が響く。骨だ。首の車軸間接がへし折られたのかもしれない。
 意識がなくなるほどの熱と痛みを感じながら、血肉が噴水のように噴出すのを冷静に見つめている自分に気づいた。自分が死に掛けているのにまるで他人事のように眺めている。痛みだってちゃんと感じてるのに、やはり僕のそういう部分は壊れているらしい。
 山野が何か叫び、僕に駆け寄ろうとしたいるのが見えた。
「一瞬の刹那が見えるうちら兄弟に勝てる者はない……ね、兄さん」
「ああ、当然や。うち等の前では皆、ドンガメやカタツムリと同じ。ノロノロ歩いて踏み潰されるだけや」
 僕に近づこうとした山野の前に男が立ちはだかる。
 山野、逃げろ、僕はそう言ったつもりだった。でも、その言葉も声にはならない。
「さぁ、終わりや。遊びで裏事に足突っ込んだことを後悔しながら死ぬんやな」
 男の握り締めた切っ先が山野に向かう。
 避けられない、山野はただ男の接近を見つめていた。
 突き出したナイフが山野の胸を刺し貫こうとした。
「かは、遊……布」
 解けた布の包帯を男に向かって投げつける。包帯がからみついた瞬間、男はわずかに声をあげた。だが、バランスとタイミングを僅かに狂わせただけで、山野に向かうナイフは止まらない。
 煌く銀色の刃が――山野の胸を突き刺す。
 その光景はスローモーション映像のように見え、ひどくゆっくりと時間が流れていく。
 僕は無理矢理立ちあがり、走っていた。
 山野に届かない分かっている手を伸ばす。
 自分でも何でそんなことをしたかは分からない。
 ただ、山野と出会った中等部でのことが、頭の中をよぎった。
「や、ま、の」
 血を噴出しながら、僕はその名前を呼ぶ。
 その瞬間――山野はニッと口元だけで笑う。
「山野夕陽を――なめるんじゃないわよ」
 刺さってない、ナイフはその刃先が僅かに山野の胸に刺さったまま止まっている。
 バチバチという音と共に火花と光が飛び散った。
 ナイフを突き出したまま、男は驚愕に顔を歪ませて大きく口を開く。
「しまっ……」
 刹那、凄まじい炸裂音が響く。
 強烈なスパークが男の身体を包み込む。
 電流だ。とてつもなく高い電流が山野から男に向かって流れている。
「ああああああああああああああああああああああ!!」
 絶叫が電流の音と混ざり、空気を震わせ轟く。
 それは、まるで花火が爆発するようだった。
 その爆発に見合う痛烈な落雷の音が響き渡り、眩い強烈な光が室内に溢れる。
 常人なら即死してもおかしくない電流が流れていることはすぐに分かった。常人でなくとも電気耐性のあるダムドでなければ耐えることはできないだろう。
 白目をむき出しにしたまま男は光に包まれ、身体をビクンビクンと躍らせる。
「あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 肌の焦げる匂いと共に、山野の体から煙が噴出し山野は背後に吹き飛ばされた。
 同時に、男の身体も背後に吹き飛ばされ頭から床の上を転がる。
 それをみながら荒い息で山野は片膝をつく。
「さすがにこれは予測できなかったでしょ……」
 山野の切裂かれた制服から、コードと黒いスリットが見えた。
 僕はそれを知っている。冬が以前、作っていたからだ。
 山野の言っていた秘密兵器、それは――電磁ジャケット。
 しかもナイフを防いだのもこれらしい。
 高電圧がかかるとジャケットがパチパチと音を立て、表地の右胸上部にある2本のスリットから中間層で放電する仕組みだと冬は言っていたと思う。僕が着るのを拒否した物が山野に回っているとは思わなかった。
 同じように吹き飛ばされた山野が咳き込みながらも立ち上がる。そして僕に視線を向ける。
「立ちなさい、高瀬君。私の宿敵がそんなことでくたばるんじゃないわよ!!」
 山野は倒れている僕に向かい、スタンロッドを突き出す。
 出来れば、そういうことは泣きそうな顔で言わないで欲しかった。
 今の僕にはその表情の意味も、これからどうすればいいのかも分かる。
 傷口の止血は具現化した布で止め、布をボールペン状の筒に変え喉に突き刺す。
 その瞬間、止まっていた酸素が布の管から体の中に入り込んでくるのを感じた。
 まだ喋ることは出来ないが、山野に向かって頷く。
 僕は自分の気持ちもはっきりと分からないし、人の気持ちもあまりとく分からない、それでも山野に向かって表現できない気持ちを送った。それが届いたのか、どうかは分からないが山野は安堵の表情を浮かべて頷くと座り込む。
 男の方を見れば、コートやスーツは燃え、髪も焼け焦げ無残な姿をさらしている。
 痙攣のせいか身体はまだ動いていたが、心停止と呼吸停止を確認しなければならない――止めを刺そうと僕が近づいた時、男の瞳が開く。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!」
 奇声をあげながらも男は立ち上がる。その声はほとんど言葉になっていなかった。
 僕はグッと拳を握り、床を蹴る。男の口元が笑みを作った。
 タイミングを合わせて男がナイフを突き出した。
 素早く突き出された銀刃。
 それを負傷している左手で受け止める。受け止めなければならない。
 僕の左手に深く、刃が食い込む。痛みの感覚は最早なかった。それでもナイフが体の中を通過するのは分かった。
 瞬間、血飛沫を浴びながら男が小さく声をあげる。
 一瞬でいい、一撃でいい、次の攻撃が遅れ、僅かなすきが出来れば。
 男がナイフを手放すのと同時に、勁を込めた右拳を放つ。
 体の回転を加えた接近状態での一撃。
 全身全霊を込めた拳、それが確かな手ごたえ、骨を砕く割る音と共に、男の鳩尾にめり込んだ。苦悶の表情を浮かべた男の身体が、くの字に折れ曲がり血反吐が飛び散る。
 僕の右手が、前のめりに倒れこんだ男の左腕を押さえる。
「貴方から離れても妹さんは生きてるんですか?」
「な……!?」
 僕の問いに男はかすれた声で答える。
「何するつもりや!?」
「平和的解決です」
 僕は一気に男の右腕をへし折る。
「あがぁぁぁぁぁぁ!!」
 男の地の底で呻くような叫び声を聞きながら、布で具現化して作ったナイフを握る。
 そして、グッと、上腕二等筋にナイフを差し入れた。
 男の絶叫と血飛沫を浴びながら、ゆっくりとナイフを動かす。
 暴れる力もないのか、男はもうほとんど動いてなかった。
 肉の奥深くにナイフが達し、骨まで届く感覚があった。さらにそこから悲鳴を無視して力を込める。
 僕が左腕を切断し終える頃には、ビクリビクリと身体を動かすだけになっていた。
「高瀬君、そういうことする時は少しは表情を変えなさい」
 そう言いながら、山野は青い顔で溜息をした。僕もこういうのはあまり好きではない。
「ああ、今度からはそうするよ」
「私は二度とごめんよ」
 山野は再び溜息をついた。
 確かに二度とはごめんだ。
 僕は爪先で軽く落ちた左手を蹴ってみる。
 床に落ちた左腕の反応はない。気を失ってるか、それとも死んでいるかどちらかだろう。
「妹さんは僕らが預かります」
 男は痛みに涙を流し、口を開閉させた。
「返して欲しいですか?」
 男は何度も頷き、残った手で僕にしがみつく。
 どうやら、この状態でもまだ生きているらしい。
「ちゃんと返します。その代わり、僕たちの殺害を依頼した犯人の情報を教え、今日中にその人物は抹殺してください。でなければ貴方も妹さんも今すぐ死んでもらいます」
 男は驚いた顔で固まっていたが、少しして頷いた。
 男はゆっくりと僕らに、全ての事情を話しだす。
 こないだの仕事で去勢したオークの家族から依頼されたことや、依頼金のこと、依頼人の住所など。そして、てむじんやあの少女と関係ないことも確認できた。
 男はそれら全てを話すと、依頼人の首を持ってくることを約束し、身体を引きずりながら廃墟を去っていく。
多分、裏事師としての仕事はもう二度とできないだろう。
 その姿が見えなくなると僕は思わず床に倒れこむ。体力が回復するまで身体は動きそうになかった。
 山野は面倒くさそうに、僕の頭を膝の上に乗せ、血を拭い始める。
「平和的解決ね……これほど空々しい言葉はないわね」
「うん、僕もそう思う」
 珍しく意見があったのが――すごく嫌だ。山野も露骨に嫌そうな顔で、『人生の終りね』等と口にしていた。
 どうやら、この湧き上がる不快感が嫌悪感らしい。
「高瀬君、貴方、殺さなかったのよ」
 眠気に襲われながら山野の言葉を聞く。
「貴方は殺人機械なんかじゃないわ」
「どう、だろうね」
 そう答えながら、僕は眠りの中へ入っていく――。


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