『ビデオテープ』

清:
「なんでやったか?んなこと理由はねぇ。……そうだな、嫌いだからだ。うぜぇ。マジでうぜぇ。酒飲む度に高志のことを殴りやがって。むかついてたんだよ。それで十分だろ?」

雄二:
「痛みに鈍い人間は嫌いなんですよ。ええ、高志くんがかわいそうで。だから僕が制裁を加えました。世の中、クズが多すぎる。皆、自分のことしか考えれないくせにそれを隠して偽善者ぶる。最初から優しさなんてもってないんですよ」

真美:
「あ、はい。私が殺しました………。あの人、自分が思ったことを聞こえないようにわざとつぶやいて何でもないとか言うんです……気持ち悪いいんですよ……。人のこと心の中で見下しているくせに隠したり……高志さんの気持ち分かります………」

鉄:
「ころころ変わるような意思レヴェルなら持たない方がいい。それは意思ではなく惰性だ。自分の弱さが分からない人間ほど自分を守ろうとする。理論で、暴力でな。そして自分が正しいと主張したがる。見えてないんだ自分自身なんて。……なぁ、高志」

「以上だ。」
真っ白な壁紙に赤いソファーとテレビしかない部屋……そこに二人の人間がいた。
ソファーに座った拘束服の少年、傍らの白衣の男だ。
白衣の男がテレビを切った。
少年がうつむく。
「……僕が父を殺したんですね……。」
「ビデオに出てインタビューに答えていたのは君自身だよ……。高志くん。」
多重人格者……それがこの少年である。
「はい……。僕は……。僕は……。」
少年の瞳から涙がこぼれた。
室内にトレンチコートとスーツの男達が入ってくる。
男達は少年に手錠をかけると部屋の外へ連れて行く。
少年は背を向けたままつぶやいた。
「ドクター」
「……。」
「……高志は僕が守りますよ……」
「君は……!!」
別の人格……!!
「誰なんだ?」
「高志ですよ……。まぎれもなく高志の一人です。」
少年の笑い声だけがいつまでも響いていた。

 

end

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