『裏庭』

僕は昔、町でも有名なお屋敷に住んでいました。
今は荒れ果てた屋敷跡ですが、時々訪れてはいつも裏庭の茂みを覗き込むのです。
そして、その度に探してしまうのです……。

今、思えばそれは親戚一同が集まった夜でした。
みかちゃんは僕より五つ上で随分お姉さんです。
いつも僕に優しくしてくれて僕も彼女が好きでした。
「けんちゃん、お外にでましょうよ」
僕はうなづきました。
親戚同士のつまらない話を聞いてるよりこちらの方が幾分かましだと思ったのです。
「きれいなお月さんね」
裏庭の茂みの前で蒼いお月さんを眺めました。
口ではうんとうなづいても……。
僕にはその美しさが分からず、みかちゃんばかり見ていました。
「あっ!ああ!!」
その時です。
「あん!ああ!!」
茂みの向こうから声が聞こえました。
「みかちゃん」
僕は不安そうにみかちゃんを見ました。
「けんちゃん、しっ!」
みかちゃんは薄い唇の前で人差し指を立てます。
その仕草にドキリとしました。
それは多分、僕はみかちゃんのことが好きだったからだと思います。
ぼく達は二人でゆっくりと茂みに近づきました。
「ねぇやめようよ」
「けんちゃんのいくじなし」
「……」
そう言われたらいくしかありませんでした。
「あ……ダメぇ……!」
苦しそうな悲鳴。
僕にはそう聞こえました。
そう聞こえたのです。
それを見た瞬間、おちんちんが縮みあがって、
僕は思わず声を出しそうになりました。
そこにいたのは僕のお母さんだったからです。
みかちゃんが僕の口を押さえました。
黒い獣がお母さんにのしかかり、その度にお母さんから苦しそうな声が漏れています。
「あ!あ!あん!」
みかちゃんはその様子を見てゴクリと喉をならしました。
ジッとその様子を見つめています。
赤い顔でずっと見つめています。見つめているのです。
みかちゃんは僕の股間を握りました。
「!!」
僕はみかちゃんが獣におかしくされたのだと思いました。
どうしようもない恐怖が込み上げてきて、いてもたってもいられません。
「うわあああああああああああああああああああああ!!!!」
僕は怖くなって声を上げ逃げ出したのでした。

その後、母が家を出て行きました。
子供の僕には何も分かりませんでした……簡単なことなのに。
大人になった今も、この茂みの向こうにあの日見た獣がいる気がしてならないのです。

 

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