『セツナさいくる』

 

「皇様」
そう、呼ばれたのは職員室を出ようとした時だった。
眼前のアルミとガラスで構成されたドア……。
ガラスに私、皇涼(すめらぎりょう)の歪んだ顔が映る。
切れ長の双眸はいつもよりもずっと鋭く冷たく、太目の眉もつり上がっている……。
嫌な自分に気づき、自然と右手はセーラー服の胸元を握っていた。
その手の中で生徒会の書類がくしゃりと潰れる。
皇様……。
その呼ばれ方は嫌いだ。
子犬の尻尾のように、私のポニーテールが逆立ちそうだった。
「様付けで呼ばないで頂けませんか?」
私はやや怒気を込めて言葉を発した。
様付けしないでください、その言葉を何度、繰り返させるつもりだろう。
私を呼び止めた生徒会顧問の教員に向き直る。
顧問の男性教師は眼鏡の蔓に指をかけて、縁なしレンズを上げた。
「お父様に是非よろしくお伝えください」
先ほど校長からも言われた言葉だ。
授業が終るたびにリピートするワード……。
「はい」
そう、短く答えて職員室を出る。
これ以上、そこにいる気にはなれなかった。
『オトウサマニゼヒ……』。
機械的に繰り返される言葉。
私の家は古い名家というので……。
複合企業皇は祖父の代から地元に多額の資金援助している。
それ故、この町での影響力は大きく……私はかなり浮いた扱いを受けてしまう。
『皇様』これから先もずっと、そう呼ばれていくのだろうか。
皇という鎖に縛られ……。
そう思った時、また私は胸元を握っていた。
少し立ち止まり、うつむく。
こんな顔、誰にも見せたくなかった。
ただでさえ、表情が冷やか等と言われてるのに……。
「私は嫌な女だな……」
小さく呟くと、私の頭にポンと手が置かれる。
「!!」
顔を上げると目の前には私のよく見知った者が立っていた。
幼馴染の芹沢克己だ。
「そうでもない」
そう言いながら口元だけでフッと笑う。
スラッとした体に、長い手足……。
百七十cmの私より身長が高く、百八十cmはあるだろうか。
表情はいつもと変わらず無表情で無愛想だった。
「つらいことがあると胸元を握る癖」
抑揚のない声で克己に言われ、慌てて胸元から手を離した。
「子供の頃から変わらない」
一気に顔が熱くなる。
「すぐ恥ずかしがって赤くなる癖」
「克己だって子供の頃と変わらぬではないか」
「時代がかった喋り方もだ」
「それは子供の頃そういう風に……」
私の言葉を遮るように、克己はまた私の頭に手を置いた。
「初生や一が心配する。一人で悩むな」
初生と一の名前を出された瞬間、さきほどの恥ずかしさとは違う熱さが込み上げてくる。
心臓がトクントクンと音をたてた。
「別に悩んでなど……」
「すぐ赤くなる」
極僅かだが、克己の声は笑っている気がした。
「……克己は意地が悪くなった」
「そうか。そうかもしれん」
克己の手が私の頭から離れる。
「後で部室に来るといい。茶でも出す」
「うむ」
克己は職員室の中に、私は廊下を歩き出す。
短いやりとり……。
その中に込めらた克己の優しさが嬉しかった。

生徒会室へ行く途中、教室の前を通りかかる。
「何アホなこと言ってるのよ、ウニ頭!!」
放課後の教室から響く怒鳴り声……。
教室の真ん中ではいつも通りのやりとりが行われていた。
「そんなことばっかり言ってるから馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿……皆から野生児とか言われるのよ、馬鹿!!」
日に焼けた褐色の少女がまくしたてるように怒鳴った。
「馬鹿馬鹿言うな!馬鹿って言う奴が馬鹿なんだぞ、筋肉女!!」
ツンツンとした髪型の少年も負けじと怒鳴り返す。
その甲高い声はまるで女の子の様だ。
殺姫初生と一一、二人とも私の大切な幼馴染だ。
息のあった言葉の掛け合いに、思わず私の口元がほころぶ。
「あ、涼!!」
初生が私に気づき手を振った。
コロッと笑顔に変わる表情と八重歯が子犬のようで可愛い。
「涼いいとこに来たぜ!!」
私に気づき、二人のやり取りが中断され……。
「聞いてよ、涼。この馬鹿ったら、テスト近いのに補習さぼって遊ぶとか言って……」
「別にいいだろ!!」
……再開された。
私は窓際の席に座ってそれを眺める。
「テストなんだから勉強しなさいよ!!アンタねぇ、また赤点取ったらどうすんのよ!!馬鹿うに頭!!」
初生が八重歯をむき出しにして怒鳴りつける。
すると一はやや頬を膨らませ初生を睨む。
「お前だってそんなに変わらねぇじゃねぇか!!」
その言葉に初生の肩がふるふると震えた。
「ア、アンタよりいいわよ!!」
「俺だってお前よりいいぞ!!胸なし!!」
「む、胸なしだと……あるわよ!!!ち、小さいだけで……」
初生の声は少し弱々しかった。
「……でも、それほど小さくもないよね?ね、涼?」
初生が私を見つめる。
困ったような顔が少し可愛いと思いつつ頷いた。
「初生ぐらいがほどよいと思うが……」
初生がジッと私の胸を見る。
「私なんか、どうせダブルAだもん……」
頬を膨らませてすねる初生を一が笑う。
「なんか……安全と信頼のダブルA住宅みたいだな」
「黙れ、アホ!!」
「なんだよ、ほめてるんだぞ、Aが二つでダブルA、良かったじゃねぇか!!」
「連呼すな!!」
中断してはまた始まる二人の喧嘩。
変わらないやりとり。
子供の頃からずっと、ずっと……。
一種のコミュニケーションと化しているのだろう。
「涼も何かいってあげてよ!!」
突然、話しが振られるが、私の答えは決まってる。
「ん。遊んだ後、勉強すればよい」
一でもなく、初生でもなく、間の意見を出すのが私だ。
私のその答えに初生がため息をつく。
「涼……甘やかしちゃダメよ。このうにとげ空頭にはきつく、きつく、きつ〜く!言わないと」
「うるせぇ!!貧乳!!」
「……一、グーで殴るよ?ん?右?左?あ、両方がいい?」
二人のやりとりはしばらく続きそうである。
そんな二人を眺めながら……私はそっと胸元を握っていた。
開けっ放しの窓からは夏の終わりの風が吹く。
夏が終わり、秋へとかわりゆく狭間に吹く風……。
それは少し暖かくて……切ない。
定まらない温度……。
その曖昧さはどこか私と似ていた。
結局、一は初生の手により補習授業へ放り込まれた。

私は生徒会での仕事を終えた後、克己のいる家庭科室へ向かう。
家庭科部……。
それが克己の所属している部活だ。
部員は克己一人だがのんびりと活動しているらしい。
唯我独尊を体言するような性格の持ち主だから気にもならないのだろう。
家庭科室のドアをゆっくりと開ける。
克己は椅子に腰掛け茶を飲んでいた。
それはのんびりとした落ち着いた仕草だった。
「来たか」
私が中に入ると飲んでいた湯飲みを机に置いた。
よく見ればその机の上にはたくさんのお菓子が置かれている。
煌びやかなラッピングをされた手作り菓子も……。
どういうことかはすぐに分かった。
「克己、また女子から貰ったのか」
「ああ……。甘い物は好きだ」
私が思っている以上に克己は女子から人気があるようだった。
友として少し誇らしい。
「たまにはゆっくりしていくといい」
克己はそう言いながら、用意してあった湯飲みに急須で茶を注ぐ。
私は克己の正面に座った。
「せっかくだが、そうゆっくりもしてられぬ」
「そうか」
克己は短くそう言った。
「忙しくても趣味は大事にしろ」
私の趣味の機械いじりとスポーツ……。
最近は忙しくて記憶の隅に追いやっていた。
「そうは言っても……」
「涼、また手を握っている」
「あ……」
言われて私は手を離した。
「無理をするな」
「皇なのだから仕方あるまい……皇は皇であるために尽力せねばならない」
「皇の力の大きさは分かる」
「……」
「だが、無理はするな」
何となく目線を合わせることはできなかった。
きっと克己はまっすぐ私を見つめているだろうから……。
互いのお茶を飲む音が響く。
「涼……」
「ん、うん……」
私は上目遣いに克己を見た。
「一と付き合うのはどうだ」
「!?」
思わず私がむせる。
それを眺めながら克己は茶を飲む。
まるで自分が間違ったことを一つも言ってないと宣言するようであった。
「ななななななな……」
自分の顔や表情がどうなっているか、容易に想像できる。
「子供の頃から好きだろう?」
何故、突然そのようなことを言い出すのか分からなかった。
一は小さい頃、仲間はずれにされていた私にできた初めての友達で……。
確かに子供の頃から今ままでずっと……好きだ。
言葉にできず答えられぬままでいると克己が言葉を続ける。
「涼は誰かといる時間を増やした方がいい」
「……」
「俺にはうまく言えん。だがそう思った」
私は少しうつむき指先を遊ばせた。
「一に迷惑がかかる」
皇がそれを許すはずもない。
仮に、もし、私と一が……こ、こ、交際したとしても……。
「それに一には初生がいるから……」
多分、私は二人の間に入ることはできない。
二人のような関係に憧れても……なることはない。
きっとそこまで届かない……一のいる場所まで。
私を縛る鎖は絡みついて解けることはないから……。
それに私は初生も好きなのだ。
「答えは悩み考えないとでない、だから悩むといい。悩むことは悪いことではない。どんなことでも過程が大事だ。納得する結果を出すためのな。その間の試行錯誤は無意味ではない。……やはりうまく言えん。すまない」
今日の克己はよく喋る。
これは中々に珍しいことだった。
克己の短くて飾らない言葉は優しくて暖かい。
不器用な言葉だが、私はそれがうれしかった。
「ん……ありがとう」
私はゆっくりと椅子から立ち上がる。
克己はまたのんびりと茶を飲みだす。
「御馳走様」
「また来るといい」
「ん……」
克己がまた口元だけの笑みを浮かべる。
私は克己に頭を下げると家庭科室を出た。
もう少し克己と茶を飲んでいたかったが……。
もうすぐセバスチャンが迎えに来て、どこかの企業の御子息に会わねばならない。
相手の名前さえ聞かないでただ会いに連れていかれる……そんなことには慣れた。
それは機械的に私を様付けする者と何等変わらない。
ただ、言われるままに行動するだけなのだから。

昇降口から外に出る。
風は相変わらず、曖昧な温度を保っていた。
テスト前で誰もいない。
そんなグラウンドはただ広いだけで……。
誰かの足跡だけが残されている。
砂漠に行ったことはないが、きっとこんな世界だろうと思う。
一がいつも部活で走っているグラウンド……。
ついつい探してしまう。いつも生徒会の窓からその姿を見ているから。
本当は私も一と同じように陸上部に入りたかった。
初生のように自分のつかみたいものを目指したかった。
でも私は……。
鞄を抱いたままグラウンドの中央に向かう。
ポツンと置かれた緑色の高飛び用マット……。
自然と一が跳んだ時の姿が思い浮かぶ。
その姿は雄々しく強く空をはばたく自由人だった。
私はセーラー服を握ろうとした手で拳を作る。
「……」
体がマットに向かい走り出す。
跳ぶ……いや、飛ぶ。空に。
一のイメージを頭の中でなぞりながら……。
紺碧の空にフワリと身体が舞う。
刹那の無重力感の中、風をセーラー服に纏いポニーテールを踊らせた。
空に向かって手を伸ばす。
届け……。
私だって……。
私だって……!!
宙で伸ばした手は……空を切った。
つかめない空。
飛ぶ事などできないと分かっているのに。
私の身体は重力に引かれ、マットの上に落ちた。
それと同時に、高飛びのバーがカランと乾いた音を立てる。
その音もすぐに消えて風の声だけが響く。
私の伸ばしたままの手は、届かなかった空に向けられていた。
キュッと開いた手を握り締める。
空は蒼く、高く、遠く、広く……。
「馬鹿か、私は……。空に届いたって何が変わるというのだ」
一人呟く声も風の中に消える。
蝋(ろう)の翼では空を飛ぶことも叶わず、そこに届くことはなかった。
諦めが指先から全身を浸透して、力を意志を奪っていく。
それなのに……。
どうにもならないと、分かっているのに……。
分かっているのにつかみたい物は私の中で騒いでいた。
「涼」
突然聞こえた私の名を呼ぶ声。
「あ……」
私は呼びかけられて、上半身を起こす。
そこに立っていたのは一だった。
「一」
慌てて飛び起きようとした時、ボスンという音と共に一がマットに沈んだ。
「あは。やっぱ柔らかいな。俺、これが好きなんだ」
一は心地よさそうな表情でマットの弾力を味わう。
その笑顔は不思議と私の心を穏やかにしてくれる。
「ほら、涼もさ、寝てみろよ
「……うん」
私も一と同じようにマットに寝転んだ。
「あ、柔らかい……」
「だろ?」
さっきまでこんなことにも気づかなかったなんて……。
それに心臓がすごくドキドキして……心の躍動感が心地いい。
ハの字型に寝転んだせいで、一の髪が私の髪に触れる。
それが少しくすぐったくて懐かしかった。
「なんかさ、二人でゆっくりすんのってよ、久しぶりだよな」
「そうだな……昔は初生達と四人でこうやって……」
夕日の土手で、枯れた芝生に寝転んで空を眺めてた。
私にとってそれはとても幸せで……。
いつか、この幸せから目を覚ますためのアラームが鳴ると知っていても……目覚めたくなかった。
私はそっと、一の手を握る……少しだけ躊躇いながら。
子供の頃は簡単にできたことなのに。
「あ……涼」
思ったより男らしい指先……子供の頃と違う。
一の熱が私の体にまで流れ込んでくるようだった。
「今は……今だけは一だけの涼でいさせてくれ。そしたら、すぐ元の皇涼に戻るから……」
「ん」
そう言って一はニカッと微笑む。
「一……」
好きだということに気づいて欲しい。
その欲求が心の奥底から湧き上がってくる。
「私は……」
「涼?」
そこまで言って私は一から手を離す。
それ以上は言葉に出来なかった……。
一に背を向け起き上がる。
「一は跳ぶのが好きか?」
「うん。好きだぞ」
表情は分からないが一は笑っていると思う。
「私は……跳べなかった」
私の声は消えそうなほど震えてた。
必死で涙を堪えてるのはきっとばれていると思う。
「皇なのに……皇なのにな」
……トブコトモデキナイ。
「フフ、皇失格だな。もっと精進して皇に相応しくならねば、な」
「涼、お前……」
一が呟くのと同時にポケットの携帯が鳴る。
そろそろ移動時間だった。
折りたたみ式の携帯を開き、電話に出ようとした。
「セバスチャン、今そちらに……」
そこまで言いかけて、それ以上の先はなかった。
セバスチャンの声が消える。
私の手から携帯が抜き取られたからだ。
「一……!?」
携帯を抜き取った一はジッと私を見つめた。
そして、私の変わりに携帯に向かって喋る。
「涼は渡さねぇからな!!」
たった一言だった。
そう、怒鳴ると携帯の電源を切る。
一が怒っているのは一目瞭然だった。
「は、一……」
一は私を見つめ携帯を投げ返す。
私は慌ててそれを受け取る。
「無理ばっかりするなよ!!」
「無理などしていない!!」
「無理してるから言ってんだぞ!!」
「誰が無理などするものか!!」
私はそう怒鳴り返していた。
「私は皇だ!!皇なんだぞ!!皇……」
力を込めて一の両肩を握る。
次々と言葉が吐き出され、あふれていく。
心の中で淀んで渦巻いていた物が……。
携帯が再び鳴るのも気にせず私は怒鳴り散らす。
「一も他の者達のように様付けで呼ぶがいい!!皇様となっ!!私は……私は……」
一はただジッと私を見つめる。
私はそれを見つめ返すことなんてできなかった。
「何故、何故……私は皇なんだ……」
ゆっくりと肩をつかんだまま地面に膝をつく。
「涼、もういい……」
「本当はやりたいことだってある!!だがな、皇というだけで私にはつかむことも跳ぶこともできない!!皇というだけで!!子供の頃からずっとだ!!」
「跳べないなんて言うな。涼だって、跳べるに決まってるじゃねぇかよ」
「無理だ……。私には……」
私には鎖を断ち切ることなど……。
「できるさ」
「え?」
顔を上げた瞬間、
ふいに、私の体が一に抱きかかえられる。
膝裏と背に手を回し抱える、お姫様抱っこという奴だ。
「きゃっ!!」
あまりに突然すぎて小さな悲鳴をあげてしまった。
「一、何を……」
私の問いに一は満面の笑みを浮かべる。
そして、どんどんマットから離れていく。
段々何をやろうとしているのか分かってきた。
「一、それは無理だ」
一なら……一人なら出来るかもしれない。
でも私を抱えてなど……。
「無理じゃねぇって。」
「でも……」
一は一点の淀みもない瞳でバーを見つめる。
「力抜いて頭空っぽにしてろよ」
「う、うん……」
「行くぜ」
私を抱えたままバーに向かい、一は走り出す。
子供の頃……一はみんなの輪の中に私の手を引っ張ってくれた。
あの頃と何一つ変わらない一と私はここにいる。
ずっと側にいてくれたのに……どこか遠くに感じてた。
加速する中、私は握った胸元の手を開く。
つかむんだ。この手の中に!!
一が側にいてくれれば飛べる、そんな気がした。
届け!!
体が宙に浮く。
風の中に溶け込むように。
バーを……越えていく。
風が、空が、手の平に集まって解き放たれていく。
鎖が、私を繋ぐ鎖が今、断ち切られる。
全てから解き放たれる蒼の瞬間。
一の顔は笑っていた。
子供の頃から変わらない笑顔で……。
つかみたいもの……それは……。
……私は手の平を握り締めると、体は重力に引かれ落ちていく。
そして、柔らかな衝撃……。
私たちは抱きしめ合うようにマットに横たわった。
「あは。な、空に飛べただろ?」
「一……」
ゆっくりと私はうなづいた。瞳からは涙がこぼれ落ちていく。
「泣くなよ」
「だって……」
一が私の手を引き体を起こす。
自分でもなんで泣いてるのか分からなかった。
ただ、一が私の手を引いてくれたあの日もこうやって泣いていた気がする。
心が震えていっぱいで……。
「俺も涼も変わらねぇよ。俺たちは側にいる」
「……うん」
「一人で無理なら俺たちがいるじゃねぇか。だから涼はもっとさ、笑ってようぜ」
「……ありがとう」
顔をあげて、まっすぐに一を見つめた。
涙でくしゃくしゃになった顔で、私は笑う。
「抗ってみる。今は弱くて無理でも……絶対」
「おう!!」
だからもう、泣かない。
キュッと握った一の手を握り返す。
本当に私がつかみたい物……。
蒼の瞬間に見えた答え……。
遠くて近い大切な……。
一のあの笑顔を自分の力でつかめるまで。

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