『サドル』

雨が降りそうな日の放課後だった。
科学部の部室で自宅から持ち出したアニメを見た帰り……。
私は彼のことを考えながら歩いていた。

私、飯田圭子は彼が好きだった。
そんなにかっこよくないけど笑った顔が好き。彼は吹奏楽部員で眼鏡をかけたどこにでもいる男の子。アニメが好きでよく美少女キャラクターの載った雑誌を見てキャーキャー言ってた。
よくよく考えれば、小、中、高と一緒だったけどまともに話したのは好きなアニメの話ばかり。
多分、彼と一番仲が良かったのは私だろう。
彼が私に好意を抱いてるのではないかとさえ思っていた。
告白なんて考えなかった。彼が私のことを好きならそれでいい。
彼の映ったアルバムの写真を見ながらオナニーするだけだ。身長も体重も知ってる。身体測定の翌朝、教卓に置かれた彼の健康手帳を盗んだからだ。
もちろんそれだけじゃない。お風呂に入ったらどこから洗うかとか、どういう本を読んでオナニーするか、何でも知ってる。知ることに罪悪感はない。むしろ興奮が抑えきれない。私だけが彼の秘密を知ってるのだから。
さらに私は彼の使用済みの水着と体操服を持ってる。最初は彼のノートだけだった。家に持って帰ってはそのノートを開き自慰したものだが、紙ではこすりにくいことに気づいた。
彼の体操服はせっけんの香りがして柔らかい。私はその匂いが彼だけの物か気になって他の数人の体操服を盗んだ。鼻先に運ぶと漂うのは同じ匂い。女子の体操服とも比べたが違う。同じ洗剤を見つけるのには苦労した。
そう、彼の短パンの中に陰毛が入っていた時は狂喜乱舞したものだ。大事に大事に保存してある。毎朝、起きた時にこれを見るととても幸せな気持ち……。
彼の体操服は最高。私の女性器はそれを着ただけで極限の高みへ舞い上がる。
アニメ雑誌を読んでオナニーするのの千倍は気持ちいい。
だけど私はストーカーとは違う。
彼に気づいてもらおうとも思わない。

私は今日も駐輪所に行くと彼の自転車を探す。
彼は時々自転車籠に体操服を入れたままにする。
注意深く周囲にばれないように……。
あった。彼の自転車。
しかし、今日は収穫ゼロ。何も入ってない。
何も入ってない……。
マズイ。もうすぐ雨が降る。
私はカッパを彼の自転車籠に入れた。
よし、メッセージカードも入れて置こう。彼も感謝してくれるはず。
私は彼が好き。彼も実は私が好き。
あ、そうだ。自転車のサドルを持っていこう。
これでいくつめだろう。
私の鞄の中の宝物……。
かばんの中いっぱいの彼のサドル。
彼は私が好き。私は彼が好き。

 

end

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