『S3(シシュンキ・セックス・シンセサイズ)』

 

自分自身が分からないだ、存在の証明だなんてさ、かっこいいこと言うつもりはありません。
分からないから道は迷ってしまうわけで……テキト−な言い訳して逃げ出したくなるわけで。
ジンジャーエール飲みながら、グランド見つめれば、皆は前に走ってるわけで……。
どうしてでしょね?
机の上に投げ出した足に、オレンジ色の灯が灯るけど、
軋んだ体は不思議と燃焼不良のまま冷えてくってのは。
「君だけなんだよね、進路用紙でつまづくのって。何が原因なの?」
そんなん言っちゃってセンセは耳元で吐息漏らすけど、誰かのせいだと言っていいなら、センセのせいデス。
首元に回す艶かしい指先はゆっくりと、ゆっくりと……。
「なりたいものとか、好みのものとかないの?つまんないことでもいいから書いたらどうかな?」
紙切れ一枚睨みつけて、浮んだ答えを消してくのは僕自身だったりして。
『おいおい、どうなっちゃうんだろ、僕の未来は』、なんて焦ってみるけど、
投げ出した進路用紙は、白紙のままイゼンミテイ。
カレンダー見れば、逃げ出すタイミングはもうありません。
「そうですね、先生。もう少し真剣に考えてみます」
なんて僕も答えられなくて、ただシャープペンシルを指先で転がす。
「やりたいことなんて若いからすぐ見つかるし、変わるわよ」
ええ、どうにもならないことは流してしまえば、随分とこの身も楽になるでしょ。
ええ、どうでもいいことに流れてしまえば、随分と好みも変わってくるでしょ。
変わりたくないから何一つ捨てられないんです、なんて言い訳しながら、
降りられないまま折れられないまま、ただしがみついてる。
「もっとじっくり考えてみて。きっと答えはでるから」
そんな曖昧な言葉で、そんなありきたりな言葉投げちゃって。
センセはゆっくりと僕の頬にキスするけど、やっぱり全てセンセのせいだと僕は思うんデス。
ゆっくりと指先と指先を重ね合わせて、胸元に僕の手を動かして。
このまま、くだらないこと消しちゃって。
堕ちるとこまで堕ちて、全部、投げ出しちゃって。
唇重ねたまま、ゆっくり重なってけば、どうにもならないことに僕も気づくから。
漂うフログレンスは少し甘くて、
「夕陽の匂いがする……」
なんて僕も囁くけど、もっと狂おしいのは混ざり合う匂いと熱を失った体が燃える感覚。
緋に染まった世界で、僕らは互いの身体に火を灯す。
非を怖れることもなく、否することなく。
ただ呼吸のリズムを重ねあう。
嗚呼、重なり合って僕はどれだけ伝えられるというんでしょ?
そんなことを考えると苦しくて……。
見上げた天井がやけに遠くて、伸ばした手はどうしょうもなくて、センセの長い髪をなでる。
抱きしめる。狂おしいほど強く、強く。
遠ざけてた痛みを甦るのを忘れるまで、熱く、熱く。
軋んだ想い、全部吐き出して。
起死回生、全部ふりきって。
歪んだ幻想も、自意識過剰な僕も、全部、全部。
しがみついてる僕自身をフリキリタクテ、フリミダス、全部。
果てるまで、振り切るまで。重なり合って、刹那でもツナガルように。
「あ、センセ……」
「ん……」
果てて。出して。終ってしまえば、離れてしまうわけで……やっぱりどうにもならないことに気づいて、また、進まなければいかんわけで。
だれのせいでもなくて、逃げ出すのは結局、僕のせいだなんてとっくに知ってる。
だれのせいにもできないことも分かってる。
ただ果てて放つ、行き場のない気持ちなんて、どうにもならない。
道が分かんなくても、僕は結局、進むしかない。
分かってる、ホントは分かってる。そんなことは十分、分かってんだ。
何一つ捨てられなくても、どうにかしてでも進まないといけないわけで……。
嗚呼、なんで泣いてしまってるんでしょね、僕は。
ただただ、センセは優しくて抱きしめてくれるけど……。
それは違うってのも気づいてる。
溺れるだけの優しさは、ただ心地いいだけだ。
軋んで痛む心の拠所にしてはいけないわけで……。
しがみついたもの全て離さなければならないことだって……。
それでも抱えていきたいと思うのは僕の我侭でしょか?
優しい痛みを心地いいと思うのは馬鹿なんでしょか?
シシュンキ特有の病ってヤツですか?
センセ、『いいのよ……』なんて言いながら優しくしないでください。
弱い僕は進めないじゃないですか、離れられないじゃないですか。
嗚呼、どうしてでしょね。
飲み干すジンジャーエールがこんなに苦いのは。


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