『喪服』

紫陽花が咲いて衣換えの季節になった。
僕がそれに気づいたのは家を出てからだ。
スーパーの袋が手の中で揺れる。
家庭科で使う小麦粉が重い。
他の物も結局、全部僕が用意した。
ポッケのタバコを取り出す。
皆に合わせて覚えたタバコ。
一人が嫌で、合わせることを覚えて、
そこにいるつもりで、いてもいなくてもどうでもいい奴になってて、
僕はいなかった。
うめようのないズレ。
ズレは傷になって僕を切り裂く。
僕は僕でなければダメなのに、その理由も好きだった自分も思い出せない。
誰とすれ違っても目を合わせることもない。
見えてないのかな。
 教室に入ると黒い制服の人たちが笑ってる。
笑われる理由も分からないよ。
ああ……そうか。
僕の机の上に花瓶が置いてあった。
そうか。僕はもう皆の中で死んでいたのか。
君達の黒い制服は喪服……。
ありがとう。ばいばい。
僕は小麦粉の袋を破りばらまく。
皆驚いてる……。
そういう目で見られたの初めてだ。
僕と同じで白くなればいい。
君達の葬式で笑ってあげよう。
僕が喪服を着て。
僕は教室を出てライターに火をつけた。
ありがとう。ばいばい。

 

end

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