『コバルト』


このジェイルの中で。僕らは聞く、骨身を削る音を。
チェーンに縛られ、何も出来ない僕ら、被縛者は蒼を見つめる。
鉄柵に囲まれた世界で、いかれたようなハワイアンブルーを眺め続けるんだ。
ペースメーカの死んだ街も、クレイジーになれない太陽も、エッジの足りない風も、みんなあの蒼に犯されちまった。蒼に孕まされた綿雲も、ただ流されてるだけで堕ろす場所も見つけられやしない。
それでも、お前らはいいさ。蒼の中にいるんだから。
ぬるくなったコークみたいな風の中、締め付ける制服を脱ぎ捨てて裸で屋上に寝転ぶ。
冷たいコンクリートに五感の全てを委ねて、股間の全てを委ねて。
群青の空に誘惑された僕自身だけが天に向かって突き上がる。
ジェイルの中にいるんだ、僕たちは。
どこにもいけやしないんだ。なにもできしないんだ。
インスタントな生き物なんだ、僕たちは。
パイプカットされた未来に向かって流され続けるだけなんだ。
僕達はこの檻の中で必死に手を伸ばすけど。
伸ばした指先は空を切って――あの蒼に届かない。
だから代わりに――握るんだ。
慰めるんだ、自分自身のか弱きアイデンティティを。
ここから出してくれなんて言わないさ。
すこしでもいい。少しでもいいから、あの蒼の欠片が欲しいだけなんだ。
この檻の中にはあの蒼が必要なんだ――乾いて死んでくだけの僕たちには。
飛ぶことも、叫ぶことも、歌うこともできない僕たちは蒼になりたい。
こんなにも魅せられて、奪われて、求めて、それでもそこに僕たちは近づけない。
軋んで、壊れて、狂ってもここから僕達は出られない。
行き場のない手で、掻き乱して、まさぐって、檻の中で熱くなる物を握り続ける。
ただ、ずっと縛られて、恋焦がれていくのが辛くて――溢れた、行き場のない白い粘液が。


back


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送