『切符』

体がだるい。
てか、俺の存在がだるい。
ワタクシ、漆原健は授業をぶっち、もしくはサボタージュなどいたしまして、
体育館館裏にある高飛び用のマットでごろごろしてた。
俺の横でマットに座り本を読んでる奴……。
同じクラスの芹沢だ。
シャープな鋭いイメージ。
俺の中ではイメージカラー蒼。紺碧。
なんとなく研ぎ澄まされた蒼の向こうにいる感じがする。
俺たちは別に仲良しこよしだからここにいるわけじゃない。
たださぼってるだけ。
「なぁ、芹沢」
「何だ?」
こっちに目もくれず本を読む。
「朱に交われば赤くなるっつうけどさ、どう思う?」
「一般的な解釈でいい」
「お前さ、小学校の時とか将来の夢つって大人とか書くタイプだろ?俺が言いたいのは何で赤くならなきゃなんねぇのかってこと」
「知らん」
「よくある青春十八切符、童貞キッズの自問自答さ」
自分でも青臭いと思います。
「朱に交わって赤くなるのはただの弱者だ」
「じゃさ、合わせる必要ってねぇのかな?」
「どっちでもいい」
芹沢は本を閉じる。
「……染まらなければな」
芹沢は立ち上がった。
その姿が空の蒼と重なる。
きっとこいつは誰にも染まることはないだろうな。
永遠の蒼。眩しいほど蒼。
一人になった俺は空に手をかざした。
あの蒼さに届くだろうか。
開いた手で拳を握りマットから起き上がる。
空をつかめた。
行こう……。
惰性の色に染まらないために。

 

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